Instagramは2017年1月17日(米国時間)、日本国内の利用者に向けて「Instagram Stories」のライブ動画配信を開始しました。

以前の記事でもご紹介した通り、「Instagram Stories」は、Snapchatのように一定時間(24時間)たつと消滅するエフェメラルSNSを売り物とした写真投稿サービスです。既に世界中で毎日1.5億人以上が利用しており(2017年1月時点)、今回のライブ動画配信機能によって更にリアルタイムでのつながりが可能となります。

ここでは改めてInstagram Storiesの基本情報をおさらいするとともに、2016年11月に導入された3つの新機能と上記のライブ動画配信について説明し、Instagram Storiesのどのような点が企業のマーケティングに有効かを解説します。その上で、Instagram Storiesを活用した広告戦略の成功事例を3ケース紹介します。

 

改めて押さえておきたい、Instagram Storiesの基本情報

stories-2

Instagram Storiesの最大の特徴は、投稿から24時間すると画像や動画が消滅する点です。

普段は写真を厳選して投稿したり時間をかけ加工したりしているユーザーでも、24時間限定で消滅することが分かっていれば気軽に投稿できるため、Instagramの使用頻度が増し活性化につながるというねらいから導入されました。定期的にチェックしていないと面白い瞬間を見逃すというスリリングな面もあり、こういったゲーム性、ライブ感はInstagramの新たな方向性といえるでしょう。

 

Instagram Storiesによって変わる企業の広告戦略

では、Instagram Storiesは、Instagramをマーケティングに利用している企業に何をもたらすのでしょう。

企業としては、精選された画像や動画をサムネイルの配置にまでこだわって「作りこむ」のが一般的ですが、Instagram Storiesではフィードの一番上に固定されるため、目につきやすく通常の動画より見てもらえる確率が高いという利点があります。ライブ感やタイムリーな要素が重視される点も見逃せません。

また24時間限定公開という特性を活かし、期間限定のキャンペーンの告知を行ったり、動画を見た人だけを対象としたプレミアムな企画を実施することができます。さらに一度Instagram Storiesを利用したキャンペーンが話題になれば、それ以降まめに訪れチェックするフォロワーが増えるという利点もあります。

 

Storiesへの新機能追加

Storiesは2016年の8月にローンチされましたが、11月10日にはさらに3機能の追加が発表されました。これらにより、企業のプロモーションへの活用が一層積極化することが予想されます。導入されたばかりのライブ動画配信も含め、それぞれの機能の特徴を見ていきましょう。

【ブーメラン機能】
ブーメランは名前の通り再生・逆再生が可能な1秒間のミニビデオ。「BOOMERANG」モードにした後∞のマークをタップすると、自動的に10枚連射が始まり一枚の動画に仕上げてくれます。画像をつなぎ合わせたものなので音声は出ません。

個人の面白動画と違い、企業が活用するには、1秒間という短さ、そして24時間で消滅するという制約のため工夫が必要ですが、「素早さ」「即時性」を売り込む商品のプロモーションには向いているでしょう。また、イベントや展示会のライブ動画を「垣間見せる」ことも可能です。

【外部リンク機能(URLの挿入)】
画像や動画の撮影後に「リンクを追加する」ボタンを押してURLを張り込むと、画面の一番下に「See More」が表示され、タップするとURLへ飛ぶ仕組み。

この機能により、Instagram内では純粋な広告以外できなかった外部サイトへの誘導が可能となりました。URL挿入により、Instagram Storiesで商品紹介を行って購入ページに移るよう促したり、ティザー広告を配信して続きは自社HPやYouTubeなどで閲覧するよう誘導するといったさまざまな活用方法が考えられます。

ただし不当なリンクが追加されないよう、Instagram側で規制をかけており、今回のリリースでは、URLの挿入が使えるのは許可された一部のユーザーだけです。今後すべてのユーザーに拡大していくことが期待されます。

【メンション(タグ付け)】
Instagram Storiesの投稿画像や動画の中に文字や絵が書き込めるのと同様、@に続けて友達のInstagramのユーザー名を入力すると、ユーザー名に下線が表示され、タグ付けが完了します。ビューワーがタグをタップするとタグ付けされた友達のプロフィールが表示され、タグ付けされた友達にはその旨が通知されます。

タグを企業が活用する機会としては、芸能人やアーティストの事務所が、その人の作品や出演動画に本人のプロフィールを添付するのは一般的な方法でしょう。

それ以外にも、有名人が本人であることを隠して撮影したりするなどで耳目を集め、Instagram Stories上で種明かしをするといった仕掛けもできそうです。

【ライブ動画配信機能】
冒頭でもご紹介しましたが、Instagram Stories では2017年1月17日から、最大1時間の動画を誰でも簡単に配信できるようになりました。開始時にフォロワーへ通知が送られるためリアルタイムでの配信がされ、同じ時間をフォロワーと共有できる動画となります。

また配信中はコメントも流れ、ライブのやりとりを楽しむこともできます。配信者は配信中、視聴者を一覧形式で確認できますし、参加者は誰でも他に誰が視聴しているか分かります。配信後に表示される視聴者数とその一覧から、動画の反応を直に知ることもできます。これによりターゲティングが適正だったか検証でき、視聴したユーザーにコンタクトを取ることも可能です。まだ事例は多くありませんが、製造の過程や現場の雰囲気などを視聴者と共有し、消費者と企業の距離を縮めるうえで、マーケティングの新手法として企業の注目が高まることが予想されます。

 

Instagram Storiesを使ったマーケティング成功事例

外部リンク機能の活用/KURASHIRU

stories-4

KURASHIRUは「世界で1番、料理がわかりやすい」をコンセプトとした日本最大の料理動画サービス。テンポ良く字幕と共に展開するレシピ動画が売り物であり、FacebookやInstagramに加え、自社アプリで月間1000本ほどの動画コンテンツを配信しています。ユーザーは24歳から35歳が中心、女性比率は92%といわれ、Instagramの利用層とも合致しています。

最近のInstagram Storiesでは、短縮版のレシピの動画配信をする中で、「外部リンクへの誘導」を行っています。写真中の案内部分をタッチすると、KURASHIRU自身のアプリのダウンロード画面へと移動するしくみ。Instagramでは紹介しきれない企業自身のサービスの紹介につながり、アプリのダウンロードによる顧客獲得も図っています。

 

期間限定/J.Crew

stories-5

J. CrewはInstagramのファンコミュニティを対象に、2016年8月、新商品のサングラス「Jane in Pink」を1日限定で事前販売(限定50個、127$)するとInstagram Storiesでシェアしました。24時間で削除されるInstagram Storiesの特性を活かすこの「期間限定販売」キャンペーンは、サングラスの特徴であるピンク色を背景に、ピンク色のサングラスをかけたJ.Crew本社のスタッフが、同色の小物を用いつつ個性豊かにふるまう楽しいストーリーを特色としました。

ファンコミュニティが事前販売の告知を見逃がすことのないよう、ブランドのフィードでも情報を補足。実際の売れ行きも好調で、Instagram Storiesを活用した広告の先駆けとして、アメリカで話題を呼びました。

 

リアルタイム/NASA

stories-6

アメリカ航空宇宙局NASAは、宇宙探査、人工衛星による地球の探査、無人探査機による太陽系の探査などを任務とし、これにまつわるきわめて多数のインスタグラムを配信しています。投稿されている画像は、宇宙ロケットとその打上げ、国際宇宙ステーションから見た地球、探査機から見た惑星、宇宙望遠鏡で見た宇宙など、美しく神秘的なものが多く、視聴者を魅了してやみません。

それだけでなく、NASAは宇宙船の中・地上で働く人たちの活気ある姿をInstagram Storiesで投稿しています。編集を加えるのではなく、撮った映像をそのまま出すリアルさはまさにInstagram Storiesの真骨頂ともいえるでしょう。だからこそ、フォロワーに、NASAの仕事とスタッフへの理解や親近感を与えてくれるのです。

 

ライブ動画配信は「ありのまま」をリアルタイムで配信するツール。

stories-3

導入されたばかりのライブ動画配信は、編集などを行わない「リアルさ」が売り物です。そしてInsagram Stories自体は「日常の何気ない瞬間を飾り気なく共有するツール」。そのため企業にも、従来に比べ、ユーザーとの隔たりをなくし、ありのままの姿を映し出すような投稿や配信が求められます。「ブランドらしさ」にこだわった周到なコンテンツ作成を展開するというより、重視されるのは「リアルさ」「タイムリーさ」ともいえます。

このInsagram Storiesの特性を活かし、これまで以上にファンとの結びつきの強固さを意識した広告戦略を打ち出していきたいものです。

Written by 島内 肇子

 

また、女性向けガールズインフルエンサーをはじめ、マーケティング活動のヒントとなる情報をまとめたeBookをご用意しました!
こちらも参考にしてみてください。
mail-img-influencermarketing-ebook